出品作品紹介

松樹 路人

1927(昭和2)年−2017(平成29)年

湿原の夕映え

(釧路湿原国立公園)
1988(昭和63)年
65.6×80.3

「北海道の風景自体、横の広がりに比べて縦がないというのが画家の共通の声。私も細岡大観望などを改めて眺めイメージを組み立てたい」こう語った松樹路人は、縦への広がりを描き出すため写実から離れ、湿原のイメージを描きだそうと試みた。
「この場所は非常に感動的で、神の作った風景のようです。夕陽を浴びて金色に輝く湿原は素晴らしいでしょう。象徴的な絵になりそうです」と湿原の印象を語り、象徴的なモチーフを再構成することに腐心した。
遠景に雌阿寒岳と丘陵の重なりを取り込み、縦への奥行きを大胆に構成した本作。近景には蛇行する川と、寄り添うように連なる灌木を描き出した。夕闇迫る木々には長い影が伸び、詩情漂う雄大な湿原が描き出されている。

中村 研一

1895(明治28)年−1967(昭和42)年

大雪山

(大雪山国立公園)
1934(昭和9)年
65.5×80.5

大雪の山々は、アイヌ民族の伝承においてカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼ばれることもある、北海道最高峰を頂く山脈だ。2,000m級の山々が連なる姿は雄大で、北海道の屋根と呼ばれるに相応しい。
中村研一はその雄大さをことさらに強調することを避け、ありのままの姿を丹念に描き出した。森林限界を超えた山頂付近の山体は灰色で、麓の深い緑と対照的である。近景から山へと続く奥深い空気感は、まさに神々が住まう山の近づきがたい威容を表している。

北川 民次

1894(明治27)年−1989(平成元)年

八幡平

(十和田八幡平国立公園)
1957(昭和32)年
65.4×80.7

メキシコに長く滞在した経験のある北川民次にとって、八幡平の風物は異国と比肩するほどの衝撃だったようである。「ことに後生掛温泉とふけの湯の宿は、あまりにわれわれの日常とかけはなれた生活を見せてくれて、全くの驚異だった」とその驚きを語っている。
本作はその温泉街から足を延ばした峠からの眺望。起伏に富んだ峰々が重なり合う火口群と、立体的なうねりを持った雲が対照的に描き出され、画面全体に動的な迫力を感じさせている。

和田 英作

1874(明治7)年−1959(昭和34)年

三保富士

(富士箱根伊豆国立公園)
1953(昭和28)年
65.7×80.5

海辺の松林は近代以前より、和歌に詠まれ屏風などに描かれてきた主題であるが、三保松原はとりわけて富士山を望む景として親しまれてきた。富士山が世界遺産に登録された際にはその文化的な景観を成す、構成資産の一つになっている。
富士という画題を好んだ和田英作による本作では、海岸線に続く松をやや低い視点から捉え、その向こうに雲を裾野になびかせる富士の峰が、見上げるようにそびえている。松は常緑だが、下草の様子からは季節が初秋であることがうかがえる。秋の透明感ある空気の中、近景の松から遥かの富士までの景観が壮大かつ、情緒をもって描き出されている。

山下 新太郎

1881(明治14)年− 1966(昭和41)年

黒部峡谷鐘釣附近

(中部山岳国立公園)
1932(昭和7)年
80.8×65.6

黒部峡谷といえば切り立つ渓谷に、岩壁の合間を縫って走る渓流の劇的な迫力を連想させる。しかし、山下新太郎は黒部峡谷を描くにあたり、鐘釣温泉から猿飛峡を経て白馬岳が見える奥地まで探訪したが、結局、鐘釣温泉付近の黒部川が写生に向くと判断した。
印象派の流れを汲む光の描写により、峡谷に差す陽光は、岩壁を覆う柔らかな新緑や渓流の白波を明るく輝かせている。
「黒部川の水の色ほど不思議に美しい流れは他にないと思われます」と山下が言葉を残した川の水は、エメラルドグリーンに彩られ、カンヴァスを撫でる様な筆致で描かれた水面は、渓谷にありながら穏やかな流れを表している。

満谷 国四郎

1874(明治7)年−1936(昭和11)年

櫃石島の帰帆

(瀬戸内海国立公園)
1932(昭和7)年
61.2×80.6

岡山県と香川県の間にある備讃諸島の昭和初期の風景である。瀬戸内海特有の白帆の漁り舟を手前に、櫃石島と小さな漁船を配し、穏やかな瀬戸内海の情景が描写されている。この付近の海域は、瀬戸内海でも有数の多島美を誇っていたが、現在は、瀬戸大橋が架かり風景は一変している。
満谷国四郎が生まれ育った故郷はこの場所から約40㎞の近くにある総社市で、最も親しみのある櫃石島を望む風景であったと思われる。若い頃アメリカやフランスで学び、常に画壇に新風を吹き込む先覚者であった満谷が、最晩年に描いた内海の静けさを湛えた懐かしい故郷の風景である。

鈴木 信太郎

1895(明治28)年−1989(平成元)年

厳島

(瀬戸内海国立公園)
1953(昭和28)年
65.3×80.5

日本三景の一つである、厳島は広島湾の西部に位置し、宮島とも呼ばれる。
本作はフェリー桟橋近くの海岸部突端から嚴島神社の方向を望んだもので、左手には五重塔と千畳閣が、右手には海中に自立する朱色の大鳥居が描かれている。
鈴木信太郎は、厳島の中心である嚴島神社本殿を、敢えて外したかのような場所からの遠望を位置取り、観光風景らしくない豊かな日本情緒を、力強い鮮やかな色彩で描き出した。厳島のもう一つの見どころである錦に変化をみせる弥山と、点々と小舟の浮かぶ波穏やかな海の表情を紫・青・緑の明澄、豊麗な色彩で対比させた。

石井 柏亭

1882(明治15)年−1958(昭和33)年

雲仙・春

(雲仙天草国立公園)
1934(昭和9)年
65.3×80.6

ミヤマキリシマが咲き誇る5月、雲仙ゴルフ場の上部、池の原から矢岳を望んでいる。
石井柏亭の描いた作品は油絵、水彩画、日本画や版画の多種にわたり、いずれも淡々とした色調と軽快な筆致で日本的で独特な画風を展開した。
広い草原にはミヤマキリシマのピンクや赤の花がところ狭しと咲き乱れ、若草の明るい緑の中に映える。誇張や激しさを避けて雲仙の雰囲気の和やかさが明るく描写された。左右の山容にさし込んだ遠方にも山々が展望される。空には柔らかく雲が漂い、静かな光が情景を甘美な色調へと包み込んでいる。

作品リスト

番号 作家名 作品名 国立公園名
1 中根 寛 サロベツ原野より利尻礼文を望む 利尻礼文サロベツ国立公園
2 服部 正一郎 知床 知床国立公園
3 鈴木 良三 羅臼岳 知床国立公園
4 上野山 清貢 摩周湖 阿寒摩周国立公園
5 辻 永 双湖台より見たるペンケ・パンケ 阿寒摩周国立公園
6 松樹 路人 湿原の夕映え 釧路湿原国立公園
7 足立 源一郎 愛別岳・比布岳 大雪山国立公園
8 中村 研一 大雪山 大雪山国立公園
9 栗原 信 支笏湖畔 支笏洞爺国立公園
10 大久保 作次郎 洞爺湖 支笏洞爺国立公園
11 柚木 久太 八甲田の一角 十和田八幡平国立公園
12 大野 隆徳 奥入瀬渓流の秋 十和田八幡平国立公園
13 林 武 十和田湖 十和田八幡平国立公園
14 北川 民次 八幡平 十和田八幡平国立公園
15 向井 潤吉 浄土ガ浜 三陸復興国立公園
16 木下 義謙 月山 磐梯朝日国立公園
17 寺内 萬治郎 荒川渓谷 磐梯朝日国立公園
18 斎藤 與里 裏磐梯 磐梯朝日国立公園
19 中野 和高 那須 日光国立公園
20 猪熊 弦一郎 塩原の渓流 日光国立公園
21 田辺 至 秋の戦場ガ原 日光国立公園
22 田辺 三重松 中禅寺湖 日光国立公園
23 中村 善策 尾瀬沼 尾瀬国立公園
24 佐竹 徳 清津峡 上信越高原国立公園
25 児島 善三郎 発哺よりの展望 上信越高原国立公園
26 小山 敬三 浅間山 上信越高原国立公園
27 中村 琢二 妙高山 妙高戸隠連山国立公園
28 福沢 一郎 奥秩父両神山 秩父多摩甲斐国立公園
29 鈴木 千久馬 奥秩父雲取山頂より 秩父多摩甲斐国立公園
30 中川 紀元 梓山 秩父多摩甲斐国立公園
31 三栖 右嗣 小笠原父島から南島・母島を望む 小笠原国立公園
32 正宗 得三郎 若葉の山中湖 富士箱根伊豆国立公園
33 川島 理一郎 芦ノ湖の夕照 富士箱根伊豆国立公園
34 和田 英作 三保富士 富士箱根伊豆国立公園
35 新道 繁 西伊豆の海 富士箱根伊豆国立公園
36 山本 鼎 秋の白馬岳 中部山岳国立公園
37 山下 新太郎 黒部峡谷鐘釣附近 中部山岳国立公園
38 中澤 弘光 上高地大正池 中部山岳国立公園
39 和田 三造 中部山岳 中部山岳国立公園
40 高田 誠 夜叉神峠より見たる白峰三山 南アルプス国立公園
41 田中 忠雄 白水滝 白山国立公園
42 鬼頭 鍋三郎 柴山潟の白山 白山国立公園
43 小磯 良平 伊勢神宮 伊勢志摩国立公園
44 川口 軌外 英虞湾 伊勢志摩国立公園
45 鹿子木 孟郎 吉野連山 吉野熊野国立公園
46 奥瀬 英三 瀞八丁 吉野熊野国立公園
47 伊谷 賢蔵 鎧の袖 山陰海岸国立公園
48 刑部 人 鳥取砂丘 山陰海岸国立公園
49 香田 勝太 大山 大山隠岐国立公園
50 牛島 憲之 日御碕 大山隠岐国立公園
51 田村 一男 三瓶山 大山隠岐国立公園
52 小野 末 隠岐の朝暾 大山隠岐国立公園
53 鍋井 克之 新和歌ノ浦 瀬戸内海国立公園
54 野間 仁根 摩耶山からの展望 瀬戸内海国立公園
55 田村 孝之介 淡路島 瀬戸内海国立公園
56 小絲 源太郎 鳴門 瀬戸内海国立公園
57 神下 雄吉 寒霞渓紅葉 瀬戸内海国立公園
58 藤島 武二 屋島よりの展望 瀬戸内海国立公園
59 満谷 国四郎 櫃石島の帰帆 瀬戸内海国立公園
60 高畠 達四郎 琴平宮 瀬戸内海国立公園
61 梅原 龍三郎 朝の仙酔島 瀬戸内海国立公園
62 鈴木 信太郎 厳島 瀬戸内海国立公園
63 須田 国太郎 春の来島海峡 瀬戸内海国立公園
64 海老原 喜之助 大華山 瀬戸内海国立公園
65 宮本 三郎 姫島 瀬戸内海国立公園
66 芝田 米三 夕陽宇和海 足摺宇和海国立公園
67 岡田 又三郎 足摺岬 足摺宇和海国立公園
68 小林 和作 由布岳 阿蘇くじゅう国立公園
69 田崎 廣助 久住山 阿蘇くじゅう国立公園
70 石川 寅治 大観峰より阿蘇五岳を望む 阿蘇くじゅう国立公園
71 坂本 繁二郎 暁明の根子岳 阿蘇くじゅう国立公園
72 石井 柏亭 雲仙・春 雲仙天草国立公園
73 野口 彌太郎 雲仙・夏 雲仙天草国立公園
74 三岸 節子 天草 雲仙天草国立公園
75 黒田 重太郎 九十九島 西海国立公園
76 有島 生馬 霧島連山遠望 霧島錦江湾国立公園
77 中山 巍 霧島よりの展望 霧島錦江湾国立公園
78 原 精一 桜島 霧島錦江湾国立公園
79 吉井 淳二 屋久島永田岳 屋久島国立公園
80 山本 貞 仲間川原生林 西表石垣国立公園

※出品作品は会場によって異なります。